Composer Kento Ishikawa
嗅覚受容体 2台のキーボードとオーケストラのための
Odorant Receptors for 2 Keyboards and Orchestra (2026)
第34回芥川也寸志サントリー作曲賞受賞記念 サントリー芸術財団委嘱作品
・初演 2026/8/30 第36回 芥川也寸志サントリー作曲賞選考演奏会(サントリーホール 大ホール)
キーボード: 秋山友貴、天野由唯 エレクトロニクス: 今井慎太郎 音響: 片桐健順
指揮: 阿部加奈子 新日本フィルハーモニー交響楽団による演奏
<編成>
3 Fl. (1.-3.Doub. Picc)/2 Ob./1E.Hn./3Cl./3 Bsn.(3.Doub. C.Bsn. )
4 Hr./3 Trp./3 Trb./1 Tub.
4 Perc.
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- Percussion set.(2 Woodblocks(L,H),1 Cro(random, upside down), 3 metal pipes(L,M,H), 2 Metal stuffs, Can, Low Cowbell, Kick drum),Bongo, Crusher, Wind Chime, 2 Chinese Gongs
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- 1 Cro.(random, upside down), 1 Metal pipe(H), MIDI Pad, Belltree, Ratchet, Pitched Crotale(B↑,Bb↓, Eb↓,),Chinese Cymb., Suspended,Cymb. Slap stick
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- 2 Suspended,Cymb.(sizzle),Timpano(29’), Xylophone, Pitched Crotale(G↑,B↓, G↓,), Separated Tile,
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-Vibraphone, Xylophone, Electric Whistle, Pitched Crotale(E↑), S.D.(upside down)
1 Hp./1 Pf.(Prepared) and Cel.
SOLI Keyboards 1. 2.
14 -12-10-8-6
<プログラムノート>
嗅覚のしくみの解明は他の感覚にくらべ長らく遅れをとっていましたが、1991年のR.アクセルとL.バックによる嗅覚受容体の発見によって、飛躍的な進展を遂げました。
私たちの鼻腔に存在する約400種類の嗅覚受容体は、それぞれがセンサーのように複数のにおい分子に反応し、その反応の組み合わせの違いによって、私たちは数十万種類以上とも言われるにおいを識別しているそうです。
空間に漂うどんな「ニオイ」も「臭い」も、「匂い」も「香り」もその400種類の受容体の反応の組み合わせの情報を脳で統合し、「金木犀の香り」や「カレーの匂い」として知覚しているそうです。
限られた要素の組み合わせから膨大な知覚の差異を作り出す嗅覚のしくみはまた、限られた素材を多様に組織化しようとする西洋音楽の構造的思考とどこか重なり合うところがあるのではないでしょうか。
本作では、においの「イメージ」をあらわすといった主観的な表現ではなく、こうした嗅覚の原理から得た着想を作曲上の重要なファクターとしてとり入れています。
本作は2台のキーボードを中央に据え、88鍵 × 2 = 176個のセンサーをもつ嗅覚受容体になぞらえています。しかし本来の嗅覚受容体のはたらきとは逆に、キーボードの音群に含まれる要素をオーケストラは多層的に拡張(垂直方向に重ねる、水平方向に並べる、あるいはオーケストラの多彩な音色や音域によって差異をつけたり、音群に対して遅れて応答する…等)し、キーボードから派生する無数の組み合わせを作りだします。その組み合わせの差異を音楽化し、その音像を空間へ広げることによって、嗅覚のしくみになぞらえた音楽を企図しました。
作品は2つの楽章から構成されています。両楽章は核となる要素を共有しながら、キーボードの音色における2つの重要な特徴(打音的要素、和声的要素)をオーケストラはそれぞれに異なるアプローチで拡張してゆきます。


