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グレタ・オト

Greta Oto   for Alto Saxophone (or Bb Clarinet) and Piano (2026) 

 ・初演 2026/7/25 ローム ミュージックファンデーション スカラシップコンサート2026「旅」京都公演

  A.Sax. 五十嵐健太 Pf. 尼子裕貴   演奏時間 約12分

<プログラムノート>

 グレタ·オト―中南米に生息するチョウの一種で、翅(はね)の大部分が透明であることから「グラスウィングバタフライ」とも呼ばれます。その透明な翅は、周囲の景色に溶け込むことで捕食者の目を逃れるために進化したと考えられており、色彩豊かな植物が生い茂る熱帯環境だからこそ獲得された、特異な生存戦略の一つです。

 私は、この蝶の美しさはもちろん、多くの生物が周囲へ擬態することで身を守るのに対し、自らの身体そのものを透明にするという発想の大胆さに強く惹かれました。透明であることは、単に姿が見えなくなることではなく、自身と周囲との境界が曖昧になり、環境の一部として存在することでもあります。

 本作では、この「透明性」を軸に、アルトサックスとピアノの繊細な弱音、素速いパッセージ、そして和声の変化を用いて、グレタ·オトの生態を描く試みをしました。前半では、アルトサックスとピアノは蝶と草木のような関係性を保ち、互いに緊張感を孕みながら進行します。しかし楽曲が進むにつれて、両者は高速なパッセージを共有しながら次第に境界を失い、どちらが前景でどちらが背景なのか判然としない、一つの音響空間へと溶け合っていきます。それは蝶が風景へと溶け込み、自らの存在を「透明」にしていく過程の音楽的な翻訳でもあります。

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